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2011年9月20日(火)

《ぴあ×チャンネルNECO》強力コラボ 【やっぱりNECOが好き!】 第1弾~第9弾

2011.9.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第9弾!!
山中貞雄の現存する稀少な作品の一本について語る!

●社会の底辺に生きる者の生のきらめきを描出

鬼才や異才など、さまざまな形容詞で称される映画監督は数多いが、日本映画史において、“天才”と呼ばれ続けた数少ない一人が山中貞雄である。彼は28歳の若さで中国で戦病死するまで、20数本の映画を遺した。その多くが時代劇を変革させた斬新な映画と伝えられるが、完全に近い形でフィルムが現存するのは3本のみ。『河内山宗俊』はそのうちの1本である。

主人公の河内山は、河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)の歌舞伎「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)に登場する悪党で、その後、講釈師・二代目松林伯円(まつばやしはくえん)が「天保六花撰(てんぽうろっかせん)に翻案したことから世に知られた名物キャラクター。これを基に山中が原作を書き、三村伸太郎が脚色して大胆なアレンジを行った。

山中版・河内山は、イカサマ将棋で小金を稼ぐ、情婦のヒモとして暮らしている社会のはみ出し者。彼はひょんなことから土地の顔役・森田屋の用心棒をしている金子市之丞と友情で結ばれる。彼らは弟・広太郎(別名=直侍)を心配しながらひたむきに生きる甘酒屋のお浪に同情し、分別のない広太郎の所業によって彼女が身売りする危機に陥ったとき、命を懸けて彼女を守ろうとする。

これは山中と前進座俳優陣との二度目のコンビ作。河原崎長十郎の河内山と、中村翫右衛門の金子市之丞。人生の目的を失ってその日を生きる二人の男が、当時10代の原節子扮する少女・お浪のため、命懸けになる場面がいい。金子市之丞は河内山に『わしはな、これで人間になった気がするよ。今まで無駄飯ばかり食ってきた男だが、今度はそうじゃないだろう。人のために喜んで死ねるなら、人間、一人前じゃないかな』と語りかける。

山中監督は、ユーモアを交えて軽快なタッチで人間を描くところに独自の味わいがあるが、その一方で、社会の底辺に生きる者の哀感、一瞬光り輝く生のきらめきを、時代劇という枠を飛び越えてリアルに映し出したところがすごい。この二人の男に純な想いを起こさせる、聖なる存在としての原節子の美しさも素晴らしい。

金澤誠(映画評論家)

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2011.8.22

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第8弾!!
“勝新時代劇の怪作”について語る!

●“What's Going On”な勝新時代劇の怪作

いま思い出しても、夢のような時間だった。薮から棒に何の話かといえば、あの“勝新”こと勝新太郎氏に、単独インタビューしたときのことだ。あれは’95年、勝さんが亡くなる2年前。取材中にもかかわらず、即興で生ギターに生唄を披露していただき、もう天にも昇る気分であった。

むろん、インタビューのほうでもたくさんの名語録を残してくれたのだが、なかでも「デビュー当時の(……つまりは、白塗りの二枚目時代の)映画には火をつけて燃やしたいものはいくつもある」と言い放ち、一方、「“製作 勝新太郎”とクレジットされた映画で、死んだ後に出してイヤなものはひとつもない」と語っていたのが印象的だった。

今回放映される『御用牙』は、その“製作 勝新太郎”とクレジットされた、勝プロダクションの映画の1本である。勝新は不世出の天才役者であったが、プロデューサーとしても人並み外れた才能を持っていた。ではちょっとここで、『御用牙』前史を。時は'72年。製作に名を連ねた、兄・若山富三郎主演の『子連れ狼』シリーズ(『子を貸し 腕貸し つかまつる』『三途の川の乳母車』『死に風に向う乳母車』)は大ヒットを記録。これは原作:小池一雄(現・一夫)、画:小島剛夕の人気コミックの映画化で、つまりは70年代に花開き、そして現在も連綿と続いている邦画界の“マンガ作品の実写化”の先鞭をつけたものと言える。

そもそも勝プロは'71年、本宮ひろ志のマンガを映画化した『男一匹ガキ大将』でこのジャンルに参入していたのだが、『御用牙』は原作:小池一雄、画:神田たけ志の劇画世界へのチャレンジで、配給は『子連れ狼』シリーズと同じく東宝。'72年12月30日公開……ということは、'73年の正月映画! 勝新自ら扮する主人公は江戸北町奉行所の同心・板見半蔵で、“かみそり半蔵”の異名を持つ切れ者である。体制内にいながら、「じゃかまし~ッ」と啖呵を飛ばして権力者にも噛みつき、本作では大奥と奉行所の腐敗へと切り込んでゆく。監督は『座頭市』『眠狂四郎』シリーズをはじめ、数々の傑作で知られる大映時代劇の巨匠・三隅研次。'72年は先の『子連れ狼』シリーズ3本に、この『御用牙』とフル稼働。'75年に病のためこの世を去ってしまったので『御用牙』が勝新と組んだ最後の映画になった(ちなみに、『座頭市物語』『痛快!河内山宗俊』など、 TVドラマではコンビは続いていた)。

さて、『御用牙』である。驚くなかれ、われらが半蔵の日課はイチモツを鍛えること。冷水をかけ、板に置いて棍棒でドンドコ叩き、さらには米俵にブスッ、ザクッと突き刺したりなんかもして(笑)。で、劇中、ソイツで桃源郷に導かれるのは朝丘雪路と渥美マリ。「イヤやめないでェ~」と喘ぎ声と共に、いろいろな悪事も漏らしてしまう役なのだ。ここでバックに流れるBGMは、歌謡ポップスのみならず、日本音楽史上の最重要人物、名コンポーザー・村井邦彦の手によるもの。さながらセルジュ・ゲンズブール&ジェーン・バーキンの睦言エロソングの名曲「Je t'aime moi non plus」を彷彿とさせ、ムードはちょっとフレンチ気分。

本作は、当時のプレスシートを飾ったコピーで言えば“活劇ポルノ”になり、勝新=半蔵は劇中、殺陣でも魅せる。相手役を演じたのは田村高廣(といえば『兵隊やくざ』シリーズの名コンビ!)。オープニングから村井邦彦先生の、マーヴィン・ゲイ「What's Going On」に匹敵するグルーヴィーなサウンドが作品の主調音を形成し、言うなればこれ、全ショット、「一体ドーなってるの?」(What's Going On)と叫びたくなるような衝撃の作なのだ。ラストにはGS(グループ・サウンズ)界の雄、ザ・モップスのイカした主題歌もかかり、勝新の耳の良さ、いかにその感覚が優れて“音楽的”かがわかるだろう。

以後、シリーズ化され、'73年『御用牙 かみそり半蔵地獄責め』(増村保造監督)、'74年『御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判』(井上芳夫監督)も生み出されたが、全ては「死んだ後に出してイヤなものはひとつもない」と語った勝新が遺してくれた、極上の“大人のマンガ”なのである。

轟夕起夫(映画評論家)

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2011.7.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第7弾!!
“角川映画の異色作”について語る!

●浅野温子が男を翻弄する小悪魔女優として開花した角川映画の異色作

「♪want you~」の歌詞で始まる南佳孝の同名主題歌を聞くと、いまだにワンレングスをけだるくかき上げる浅野温子の顔が浮かんでくる——。

角川映画と言えば、一般的に薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子の角川3人娘をフィーチャーしたアイドル映画で知られるが、片岡義男原作のスローなブギにしてくれ』を筆頭に、大藪春彦原作の『野獣死すべし』や『汚れた英雄』など、ハードボイルド映画も数多く存在する。しかも、スローなブギにしてくれ』の藤田敏八監督をはじめ、『セーラー服と機関銃』の相米慎二、『探偵物語』の根岸吉太郎ら、にっかつロマンポルノの精神を引き継ぐ監督たちを積極に起用しているのだから、うっかりアイドル目当てに見に行ったら、濡れ場の艶めかしさに“イケないモノ”を見ちゃった罪悪感を覚えたものだ。

『スローなブギにしてくれ』では、浅野演じる奔放な少女が、偶然出会った白いムスタングに乗ったおじさん(山崎努)によって複雑怪奇な大人の世界に足を踏み入れることになるのだが、80年代に子供時代を過ごしていた者にとって、角川映画こそが“白いムスタングに乗ったおじさん”だった。角川映画を見て、随分と大人への階段をのぼらせてもらったものだ。

本作で浅野は、19歳当時のピッチピチのヌードを披露。それどころか、強姦魔(演じているのは作家・高橋三千綱と『相棒』シリーズの和泉聖治監督!)に襲われるシーンにも挑み、女優としての地位を確立した。浅野同様、藤田監督の手によって代表作を残した女優は多い。『修羅雪姫』の梶芽衣子、『赤ちょうちん』などの秋吉久美子、『ダブルベッド』の大谷直子&石田えり、そして『ダイアモンドは傷つかない』で初主演&初ヌードを飾った田中美佐子などなど。また、前述の和泉聖治をはじめ、大林宣彦、伊丹十三など、監督仲間がひょっこり脇役出演している作品もある。晩年は俳優業が中心となった藤田監督だが、映画界に遺した功績は大きい『スローなブギにしてくれ』を見れば、そのことが強く実感されるだろう。

中山治美(映画ジャーナリスト)

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2011.6.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第6弾!!
“『Xファイル』を凌ぐドラマが40年以上前に?”について語る!

●『Xファイル』を凌ぐドラマが40年以上前にあった!

『ウルトラセブン』で頂点を極めた怪獣ブームも落ち着いてきた'68年、子供たちの心は、“ゲゲゲ”な妖怪ブームへと移り始めていた。そこで、円谷プロが妖怪ならぬ怪奇色を加えた特撮ドラマとして世に送り出したのが『怪奇大作戦』だ。

警察では解決できない常識を超えた怪奇な事件に、SRI(Science Research Institute=科学捜査研究所)のメンバーが科学の力で立ち向かう。怪獣好きの子供としては、「ウルトラ」シリーズと同じ日曜夜7時からということもあり、ウルトラ警備隊のような正義のチームが怪事件に挑む特撮番組を想像していた。ところが、『怪奇大作戦』は想像を遥かに超えた作品だったのだ…!

今でも忘れられないのが、'68年12月29日。夕食時のTVに思いもしない映像が映し出された。夜道を歩く女性。一陣の風が吹き、街灯の電球が割れた次の瞬間、その女性の身体がバラバラになったのだ…。そして、タイトル『かまいたち』。それは子供にとってトラウマとなるに十分な映像。思えば、蛾が人間をドロドロに溶かした『人喰い蛾』、小さな人形が主人に代わって復讐する『青い血の女』、恨みと生への執着心から怪物へ変貌する『光る通り魔』など、衝撃映像の連続だった。

そんなトラウマ満載の『怪奇大作戦』だが、大人になってから見直すと、奥底の恐怖に気づく。“特撮の神様”円谷英二、奇才・実相寺昭雄監督、名脚本家の佐々木守や市川森一ら、一流のクリエイターが作り出した作品群は、暴走した科学だけでなく、悲しい過去への復讐や歪んだ愛情ゆえの犯罪もあり、事件が終わってもやり切れなさの残るエピソードが多い。なかでも『京都買います』の、京都の伝統に興味のない現代人に絶望した女性と、SRIの牧史郎が迎える幻想的でシュールなラストシーン。僕は特撮ファンの間で円谷プロの最高傑作と呼ばれる『怪奇大作戦』で、“やるせなさ”という感情を知ったのかもしれない…。

竹之内円(ライター)

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2011.5.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第5弾!!
“日本映画初!”について語る!

●元祖グラマー女優・前田通子の肢体を拝め

「海の女」と書いて“海女(あま)”と読む。これは、いわゆる女性の潜水漁師のこと。日本古来から存在する伝統的職業である。この、もはや絶滅種に近い「海女さんの世界」が、とんでもなく熱いスポットを浴びた時代がかつてあった。

1950年代中盤。まだ女性に対するセクシー表現がダイレクトに許されていない頃。ずばり、海女さんを主人公にした「海女映画」は、正面きって女優にあられもない格好をさせることのできるジャンルとして、殿方のあいだで人気を博していたのだ。

そのジャンルを支えた一人、しかも歴史に残る人物を紹介しよう。日本映画で初めてフルヌードになった元祖グラマー女優、前田通子である。

彼女について語るにはまず、'56年公開の初主演作『女眞珠王の復讐』に触れなければならない。それまで日本映画では、女優が直接ハダカを見せることはなく、たいていはストリッパーによるボディダブル(吹き替え)が行われていた。ところが彼女は、バックショットではあるが、果敢にも生身でフルヌードに挑んだのだ!

『女眞珠王の復讐』には劇中、前田通子が無人島へと漂流し、かなりきわどい衣装になり、海女役ではないが素潜りをするシークエンスがあるのだが、翌'57年の『海女の戦慄』では冒頭、彼女はいきなり振り向きざまに上半身ハダカで手ブラ状態。そこにタイトルが出て、拳銃を構える男の影が浮かび上がるや、一転、物語は始まっており、海女として海岸に出ているシーンへ。もうカンペキな導入である。続いて、ミス海女に選ばれ東京に出たまま消えた妹(三ツ矢歌子)、死体となって戻ってきたその友人(万里昌代 ※当時は万里昌子)の事件が、彼女をさらなるサスペンスへと巻き込んでいく。

この2作を製作したのは新東宝映画。スタート当初は市川崑、黒澤明、溝口健二、成瀬巳喜男らも名作を撮っていた由緒正しき会社だったが、経営不振に陥り、そこで社長になったのが大蔵貢だ。元サイレント映画の弁士で興行師あがり。次第に“エロ・グロ・ナンセンス”な企画で勝負し始め、『女眞珠王の復讐』『海女の戦慄』はその代表作に挙げられる。2作とも完全に「前田通子推し」で、彼女は『海女の戦慄』では主題歌「海女の慕情」も歌っている。

さて、前田通子はグラマー女優として一躍スターダムにのし上がり、新東宝の屋台骨を支えたのだが、後に大蔵貢並びに会社に酷いしっぺ返しを食らったのだった。ここに詳細を書きたいところではあるが、それはまた別の話。『女眞珠王の復讐』『海女の戦慄』は全編、“動くグラビア”としてのアイドル映画の魅力が横溢している。実は監督の志村敏夫と当時、彼女は“恋人関係”にあった。だからこそ出来た大胆な演技でもあった。

まだまだ無数のエピソードに彩られている伝説的な女優、前田通子。彼女に興味を持った方はぜひ、貴重なインタビューの載っている川本三郎著「君美わしく 戦後日本映画女優讃」(文春文庫)を読んでいただきたい。

轟夕起夫(映画評論家)

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2011.4.27

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第4弾!!
あの伝説のアイドルについて熱く語る!

●伝説のアイドルが残した宝物のような映画

2008年11月、関西独立リーグに日本初の女性プロ野球選手が誕生したとき、「この日が本当に来たんだ…」と思った多くの人は、『野球狂の詩』を思い出していたに違いない。水島新司が描いた原作コミックと同時に思い浮かべたのは、映画版で水原勇気を演じた木之内みどりのハニかんだような笑顔だったはず…。

1977年、高校生だった“彼”は、ロック以外のレコードは買わないと決めていたほどのロック少年だった。下校の途中、彼は壁のポスターに目を留めた。そのポスターには木之内みどりの投球ポーズが大きく印刷されていた。彼は辺りを見渡し、誰もいないことを確かめると、そのポスターをはがして持ち去った…。

木之内みどりはそれほど“特別”だったのだ。当時も多くのアイドルがいたが、コケティッシュでスレンダーな木之内みどりは、ほかのアイドルとちょっと違っていた。歌手でありながらグラビアへの登場も多く、テレビへの出演は決して多くはなかったが、ブロマイドの売り上げはトップ。アイドル好きの間でも、「木之内みどりが好き」と言うと、「こいつはちょっと違う」と一目置かれるような存在だった。そんな木之内みどりが大きなスクリーンで見られるのは、ロック少年にも大事件だったのだ!

映画「野球狂の詩」では、不振にあえぐプロ野球チーム・東京メッツが、起死回生のルーキーとして高校女子野球チームのピッチャー・水原勇気を指名。野球協約や女性としてのハンデを乗り越えて初登板するまでが描かれた。高校時代の短パン姿での投球シーン、まさかの着替えシーンに入浴シーン、笑顔だけでなく困り顔にむくれ顔まで、ほかでは見たことのない木之内みどりがそこにはいた…。

1974年の歌手デビューから、1978年の電撃引退までのわずか4年間に出演した映画は、『野球狂の詩』1本のみ。木之内みどりを愛したかつての少年たちにとって、それはそれは宝物のような映画なのだ。

竹之内円(ライター)

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2011.3.22

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第3弾!!
あの国民的美少女が…

●美少女ゴクミとなつかしの80'sアイドルたち

今やセレブマダムとして女性誌などに登場する後藤久美子だが、80年代後半、彼女は宮沢りえらと共に“美少女ブーム”を巻き起こしたアイドルだった。’87年の大河ドラマ「独眼流政宗」で愛姫の少女時代を演じて注目された彼女は、キャッチフレーズ通りの“国民的美少女”へと上りつめ、彼女の愛称“ゴクミ”は、その年の流行語大賞(銅賞)に選ばれたほど。同じく'87年には、普通っぽさが魅力の女子高生ユニット、おニャン子クラブ出演の「夕やけニャンニャン」も放送終了し、ゴクミたちの台頭は、当時のアイドル像をより若い“美少女”へと変化させた。

そんな人気絶頂のゴクミのために作られたようなドラマが、'87年夏に放映された「同級生は13歳」。アラブ帰りで頭脳明晰、柔道から茶道までこなす13歳・日向夏子という役どころは、彼女の小麦色の肌、大人びたクールな佇まいに見事にマッチ。物語では13歳ながら高校2年に編入した夏子の、離別した両親への想いや、3歳年上の同級生たちとの交流、淡い恋が描かれるが、底抜けに明るいコミカルな学園生活に、バブル経済絶頂期ならではのお気楽さもプンプンと漂ってくる。

そして、さらに見逃せないのは、意外なほどに豪華な共演者の面々!

今やハリウッドでも活躍する真田広之が、「猪苗代健康」という奇妙な名の体育教師役で登場。脳まで筋肉という役どころゆえ、身体を張った(痛い)ギャグの数々も見せてくれる。中井貴恵をめぐって所ジョージと対決する姿などは、今ではおよそ見られまい。さらに、もたいまさこ、村上里佳子、高樹沙耶(現・益戸育江)、塩沢ときなど、バラエティにとんだユニークな顔合わせに加え、生徒役には当時のアイドルがズラリ。前田耕陽をはじめ、斉藤隆治、松本典子、網浜直子、そして後にバラドルと呼ばれるようになる山瀬まみ、井森美幸らは、当時から一風違った個性を放っている。しかも、ビデオ・DVD未発売のお宝作品。ドラマファンなら、見て損はない貴重な一作だ。

渡辺いさ子(映画&エンタメ・ライター)

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2011.2.23

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第2弾!!
さて、今回は…

●『雌が雄を喰い殺す かまきり』女たちの快楽原則はいつの時代も容赦なし

男性の草食化が進んだ今の時代だからこそ、むしろ衝撃的。昭和42年という高度経済成長期のイケイケな日本における、肉食全開の“セックス、マネー、バトルロワイアル”を描いたカルトな傑作。その名も、『雌が雄を喰い殺す かまきり』2部作だ!

本シリーズの“雌かまきり”は、ビジネスの世界に生きる野心的な男たち(今なら中国にたくさん居そうなキャラクター!?)から、財産や地位をむしり取ろうとする欲深い女たち。『かまきり』と続編『三匹のかまきり』にはストーリー上のつながりはなく、同じテーマの別バージョンといった趣。両作とも、それぞれ3人の美しい悪女が登場する。

メインとなる女優は、当時34歳の妖艶な岡田茉莉子(すでに吉田喜重監督の夫人だった)。そして、リカちゃん人形のモデルになったことでも有名な香山美子。さらに『かまきり』には吉村実子、『三匹のかまきり』には佐藤友美が加わるという強力な布陣だ。

筆者が特に戦慄したのは、第1作の香山美子。財力を使って大量の愛人を囲う絶倫の成金社長(加東大介)の秘書役なのだが、最初はまったくの清純派の顔で登場する。そして、普段は女たちを性の道具にしか見ていない社長が、彼女にマジ惚れしてしまう。

「一度でいいから本当の恋がしたいんだ。そこに現れたのが君だったんだ。男の手垢がついてない娘がね!」

しかし彼女の本性は…。

“愛”をも武器にしながら、欲しいモノを奪っていく展開はホラーばりに戦慄! やはり人間界も、常に男の上を行くプレイヤーが女である。利用されるフリをして、逆に喰い殺す隙を狙っている。『嵐を呼ぶ男』や『黒蜥蜴』などの凄腕職人・井上梅次監督が遺した、『氷の微笑』などに負けない第一級のエロティック・ミステリーだ。

また、こんな注目ポイントも。『三匹のかまきり』の冒頭、セミヌードを披露している女優は、あの藤田憲子ではないか!? どうぞ、出だしから見逃さないでいただきたい!

森直人(映画批評、ライター)

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2011.1.21

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載スタート!
『修羅雪姫』 根強い人気を誇る残酷までに美しい名作

映画オタクで知られるクエンティン・タランティーノ監督が、“日本映画LOVE”を惜しげもなくさらけ出した映画「キル・ビル Vol.1」(’03)。中でも、白い着物をまとって日本刀を振りかざす女殺し屋オーレン石井(ルーシー・リュー)は、「修羅雪姫」シリーズで梶芽衣子が演じた雪そのもの! そこに、同じく梶の代表作「女囚さそり」シリーズの主題歌「怨み節」を流して、「修羅雪姫」の雪&「女囚さそり」のナミという、日本映画界を代表する二大“情念の女”のコラボを実現させた。

一体、タランティーノ監督をこうも魅了した雪とは何者なのか? 「白雪姫」を思わせるメルヘンチックなタイトルの響きに反して、彼女の出自は暗い。夫と子供を殺害された母親の怨みを果たすために生を受け、引き取られた横海和尚(西村晃)のもとで厳しい修行に耐え、復讐の旅に出る。まさに、修羅の道を生きるべく運命づけられた「人の姿をした鬼畜・外道」(by「修羅雪姫」)なのだ。

トレードマークは、白の着物と蛇の目傘に仕込んだ刀。雪が悪党を倒すたびに着物や透き通った肌に返り血を浴びる、そのコントラストが残虐なまでに美しかった。「キル・ビル Vol.1」でも再現された雪景色をバックにしたラストシーンでも、白い雪の上に飛び散る鮮血が、死の残酷さをより一層際立たせていた。

様式美を感じさせる見事な演出を施した藤田敏八監督は、梶とは「野良猫ロック」シリーズに続くコンビ。安保闘争に沸いた当時の気運を感じさせる反権力思想を娯楽映画の中に投影し、数々の傑作を生みだして来た。その傾向は、続編「修羅雪姫 怨み恋歌」にも顕著に現れている。その藤田監督が’97年にこの世を去った今、梶はロックバンド「頭脳警察」とライブで共演するなど、雪の人生を彷彿させるようなパンクな生き方がファンには嬉しい。

ヨッ、芽衣子姐さん!

中山治美(映画ジャーナリスト)

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