新着情報
INFORMATION
2016年9月26日(月)
《ぴあ×チャンネルNECO》強力コラボ 【やっぱりNECOが好き!】 第60弾~第69弾
ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第69弾!!
劇団☆新感線の人気舞台をディープに鑑賞せよ!
かつて、舞台は “生”がすべてで、その魅力は映像を観ても伝わってこないというのが定説だった。それを覆したのがゲキ×シネだ。複数のカメラを用い、ロングショットから俳優のアップまでを多彩に捉え、舞台では見逃してしまいそうな一瞬の表情なども押さえたうえで、それらをリズミカルな編集でつなぐことで、舞台とはまた違ったエンターテイメントに仕上げるのだ。
そんな革新的なゲキ×シネを作り出したのが、劇団☆新感線。現在、生田斗真主演の新作公演「Vamp Bamboo Burn~ヴァン !バン!バーン!~」を上演中。長野、東京を熱狂の渦に巻き込んで、10月からは富山、大阪で公演する。演出家のいのうでひでのりは、もともと大の映画好き。舞台の演出の仕方も、映画でカメラがアップからロング、ロングからアップに動くことを意識しているそうで、そういった手法が映像化とも親和性があるに違いない。
新感線は常に、従来あるものに革新をもたらしてきた。劇団の人気シリーズ「いのうえ歌舞伎」は、「神話や史実などをモチーフとし、ケレン味を効かせた時代活劇」(劇団ホームページより)。歌舞伎をはじめとした和テイストの物語性や手法に、洋楽や洋画のテイストや現代日本のカルチャーを混ぜ、新しい舞台を生み出して劇団☆新感線随一の人気シリーズとなった。
「近年では、その持ち味に加えドラマに重きを置き、人間の業を浮き彫りにした作品作りへ転化している」ということで、映画・チャンネルNECO では圧倒的な人間の業が描かれた近作「いのうえ歌舞伎」シリーズの3本を放送。10月放送の「シレンとラギ」に始まり、12月放送の「蛮幽鬼」、2017年1月放送の「蒼の乱」、そして新感線が初めて挑んだ本格的ロックミュージカル「SHIROH」(12月放送)を含む4本を4ヵ月連続でオンエアする。
「シレンとラギ」は、ギリシャ悲劇「オイディプス王」をベースに、座付き作家・中島かずきが描く、北と南に分かれて戦う国家の思惑に巻き込まれた男ラギ(藤原竜也)と女シレン(永作博美)、二人の暗殺者の悲しい恋の物語だ。二人の間には驚きの秘密があり、それが彼らを非常に物狂おしい想いへと駆り立てる。どこまでも深い愛を、藤原と永作が全身全霊で演じ切る。この愛の表現は、「いのうえ歌舞伎」の名作「阿修羅城の瞳」を彷彿(ほうふつ)とさせる。それがさらにバージョンアップし、悲劇の色が濃厚になった。
もう一人注目したいのは、シレンが狙うカリスマ教祖を演じる高橋克実。TVドラマではユーモラスなおじさまの印象が強い高橋が演じる、極悪人の華麗な躍動から目が離せない。また、朝の連続テレビ小説「あさが来た」で人気沸騰した三宅弘城や、藤原と「オレステス」というギリシャ悲劇で共演したことのある北村有起哉も大活躍。藤原、永作、高橋、三宅、北村、石橋杏奈と豪華な客演陣に、新感線劇団員の古田新太、橋本じゅん、高田聖子なども安定の活躍ぶり。中でも、古田が演じるラギの父がトリッキーな人物で、その一挙手一投足に釘付けになる。
ゲキ×シネならではの楽しみどころは、次々起こる衝撃の出来事に対する藤原竜也の表情を、アップでしっかり観られること。本気で心が震えているように見える姿が、観る方の心も大きく揺さぶる。“迫真”とは、藤原竜也のためにある言葉だと思わされる。
2016.8.26
ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第68弾!!
一度観たら忘れられない“トラウマ特撮映画”
「吸血鬼ゴケミドロ」——。タイトルを見て、多くの方は“キワモノ映画”だと想像されるだろう。だが、本作は多くの人たちの脳裏に「子どものころに観て本当に怖かった映画」として深く刻まれている、「マタンゴ」と並ぶ昭和モダン・ホラーの名作なのだ。かのクエンティン・タランティーノも本作の大ファンを公言。「キル・ビル Vol.1」の主人公が、日本へやって来るときに乗っているミニチュアにしか見えない旅客機、そして異様に赤い空は本作へのオマージュだったりもする。
さてこの映画、どこから語り始めればいいものか…いろいろと展開がスゴいのだ。羽田から伊丹へ向かっている小型旅客機が、逃走中の殺し屋にハイジャックされるところから物語は始まる。ところが、旅客機に謎の発光物体が異常接近! 計器は壊れ、エンジンは火を噴き、どことも知れない荒れ地に墜落。生き残った10人は救助を待つことにするが、殺し屋がCAを人質に逃げ出すと、そこには円盤がいて殺し屋に寄生生物が取りつき、吸血鬼へと変ぼう。そして生存者を次々と襲っていく…。
名作パニック映画「エアポート」シリーズ全作を1本にまとめたような異常事態である。わずか十数人しか乗っていない旅客機で、殺し屋と自殺志願の爆弾男が乗り合わせるという“夢の共演”が実現。殺し屋は拳銃とライフルを、自殺志願者は時限爆弾を機内に持ち込んでいるというユルさもスゴい。きっと機内を探せば、対戦車ミサイルを持ち込んでいる人もいたに違いない。
しかも、この殺し屋はダンディでカッコいいのだが、上下真っ白のスーツ。“世界一目立つ殺し屋”なのだ。殺し屋だけにとどまらず、生存者には異常に濃いキャラが揃う。主人公の副操縦士とCAは割とまともだが、誰でも自分の言いなりになると思っている悪徳政治家、その政治家に賄賂を渡して便宜を図ってもらおうとする兵器会社役員と、政治家の愛人になっているその妻、ことあるごとに周囲を不安にさせることを言って喜んでいる精神科医、「吸血鬼が血を吸うところを見たい!」なんて言ってしまう宇宙生物学者、夫をベトナム戦争で亡くしたと同情を買いながら残っていた水を化粧直しに全部使ってしまうKYなアメリカ人女性…と、他人のことなんてどうでもいいと思っている人だらけ。ここまでキャラが立っていると、次に誰が死ぬのかさっぱりわからなくなるから目が離せないのだ。
設定やあらすじがこうなら、特撮だって“トンデモ映画”一直線。なかでも、子どもたちを震え上がらせたのが宇宙生物の寄生シーンだ。殺し屋の額がパックリと割れて、そこにアメーバ状の宇宙生物が入り込んでいく…。普通の映画なら、宇宙生物が入り込んだ後に割れた額は元に戻るのだが、この映画は割れっぱなし! 逆に言えば、誰でもひと目で吸血鬼と分かる都合の良さ。印象的でぶっ飛んだ特撮シーンを担当したのは、「マグマ大使」や「スペクトルマン」、「快傑ライオン丸」など、カルトな名作特撮ヒーロー作品を世に送り出したピー・プロダクション。本作の原作と企画自体、ピー・プロダクションの社長であるうしおそうじによるものなのだ(「新世紀エヴァンゲリオン」や「シン・ゴジラ」の音楽で知られる鷺巣詩郎の実父でもある)。余談だが、ゴケミドロの円盤は後に「スペクトルマン」の敵である宇宙猿人ゴリの円盤として再利用されることとなる。
ここまで読んで猛烈に「ゴケミドロを観たい!」と思われた方に朗報がある。映画・チャンネルNECOでは、7ヵ月連続企画として「特撮大国日本」が始まるのだ。その第1弾のテーマは“日本の「インデペンデンス・デイ」を探せ!”。ラインナップは「吸血鬼ゴケミドロ」と、成層圏から襲ってくるクラゲ状のドゴラを、日本怪獣映画の伝統である着ぐるみを一切使わずにアニメとミニチュア操作で見せた「宇宙大怪獣ドゴラ」、日本初のカラー特撮映画として公開され、ヒトデ型宇宙人パイラ人のデザインを天才芸術家・岡本太郎が担当した「宇宙人東京に現わる」をお届けする。
さて、この「吸血鬼ゴケミドロ」、84分しかないのに、世界中の事故災難を一手に引き受けたかのような展開に加え、異常に濃いキャラの生存者10人の欲望が交錯する極限状態の人間ドラマが繰り広げられるわけだが、あなたは最後に二度驚くことになる。まず、旅客機が墜落していた場所に驚く。きっと画面に向かってツッコミを入れたくなるはずだ。そして、後に公開されるホラーの名作「サンゲリア」や「デモンズ」にも通じる、思いもしない結末に驚く。それらも含めて、多くの子どもたちにショックを与えたトラウマ特撮映画の魅力なのだ。
2016.7.25
ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第67弾!!
佐藤健、神木隆之介、綾野剛…“役者が覚醒する瞬間”を目撃せよ!
1990年代に週刊少年ジャンプで連載された「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」は、累計発行部数が5000万部を超える言わずと知れた人気作。幕末に人斬り抜刀斎として恐れられた伝説の剣客・緋村剣心が、二度と人を殺さないことを誓い、新たな時代の中で生き方を模索する姿を追ったストーリーは、幕末~明治の史実を絡めて重厚な作品世界を作り上げた。クオリティーの高い物語はアニメや宝塚版ミュージカルなどでメディアミックスされてきたが、とりわけ実写映画版3作はシリーズ合計興行収入125億円を突破する大ヒットを記録した。
マンガ原作の映画化では、“いかに役者がキャラになりきるか”が成功のカギを握るが、本作では役者陣が実に魅力的なキャラクターを作り上げている。並み居る原作ファンを納得させた“原作に忠実なキャラクター作り”は、本作の大ヒットの要因だと考えられる。
正直、線が細い印象の佐藤健だが、ずば抜けた身体能力を活かし、一年にわたってみっちりと剣術を練習。ドニー・イェンに認められたアクション監督・谷垣健治の指導のもと、伝説の剣豪にふさわしいスピード感と気迫ある殺陣を披露し、演技とアクションを兼ね備えた役者として独自のポジションを築き上げた。
役者として新境地を切り拓いたのは佐藤だけではない。最近、優香との結婚で話題になった青木崇高も、喧嘩上等の相楽左之助を豪快に演じ、骨太な魅力を印象づけた。ブレイク前の綾野剛は華麗な殺陣に挑み、神木隆之介は暗殺者としての闇を笑顔の下に隠し持つ瀬田宗次郎に扮して不穏なオーラを放ち、土屋太鳳は持ち前の運動能力を活かして忍びの者らしい柔軟性のある殺陣を披露した。若手のみならず、もはや異次元の存在感を放つ香川照之の強烈な悪役ぶり、最強の敵役に扮した藤原竜也の緊張感みなぎる “狂演”など、ベテラン勢のなりきりぶりも素晴らしい。
佐藤、青木、綾野、神木、土屋らは、本作を機に役者として大きな飛躍を遂げた。原作のキャラクターになりきった彼らが“役者として覚醒した瞬間”に目を向ければ、本作の新たな魅力に触れることができるはずだ。
役者たちを覚醒させ、その魅力や能力を最大限に引き出したのは、次々と話題作を放つ大友啓史監督。NHK局員時代に手がけた「ハゲタカ」では大森南朋の、「龍馬伝」では福山雅治の新たな一面を引き出し、新作映画「秘密 THE TOP SECRET」でも、主演の生田斗真はもちろん、脇に回った松坂桃李や岡田将生の個性を十分に活かしている。イケメン俳優を時にはイケメンとして使わず、一人の役者として輝かせる手腕は貴重なもの。今後公開が控える「ミュージアム」では小栗旬が、「3月のライオン」では神木隆之介がどんな覚醒を見せるのか、今から楽しみで仕方がない。
2016.6.24
ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第66弾!!
時代に抗い、過激さ、自由さを追求する 孤高にして抱腹絶倒のバラエティ番組!
「8時だョ!全員集合」「オレたちひょうきん族」「とんねるずのみなさんのおかげです(現・おかげでした)」「ダウンタウンのごっつええ感じ」——。日本のテレビ史は、時代を、そして世の中を変える数々のバラエティ番組に彩られてきた。一方で、現在のバラエティ番組はといえば、笑いよりも情報性に重きを置く傾向にあることはご存知の通り。お笑い番組を標榜しながら、「友情・努力・勝利」といった万人受けしそうな要素をちりばめて、最終的に“感動”をもたらそうとする番組も少なくない。
そんな現在において、「オレたちひょうきん族」や「とんねるずのみなさんのおかげです」を観て笑い転げた40~50代の人たちにおすすめしたいバラエティ番組がある。放送局は、「YOUは何しに日本へ?」「世界ナゼそこに?日本人 ~知られざる波瀾万丈伝~」「家、ついて行ってイイですか?」など、挑戦的な企画のバラエティ番組を世に問い続けているテレビ東京(ご存知の通り、深夜ドラマも絶好調だ)。そして、DVDの累計販売本数は驚異の55万本! それが、テレビ東京の深夜帯で10年以上にわたってオンエアされ、世のお笑い好きたちから熱烈な支持を集めている「ゴッドタン」だ。
その魅力の第一は、エッジのきいた企画の数々。例えば、今回の傑作選で放送される「西川史子にキスしてもらえ!」と「角田信朗に3ヵ所ケリを入れろ!」。アンジャッシュ・渡部が口八丁手八丁で美人女医にキスを迫り、スピードワゴン・井戸田はアホのふりをしながらプロの格闘家を蹴りつける(しかも一心不乱に)。番組初期のDVD未収録回にしてこの面白さは、ほとんど驚異的ですらある。
ほかにも、「おっぱいを見せてもらえ!」「ヒドイ女サミット」など、タイトルを見た段階で既に笑ってしまいそうな企画がずらり。ゴールデンでは絶対に通らないであろう「ラディカルでくだらない企画」の数々は、テレビのバラエティが「自由で過激で時代の先端を走っていた」往時を思い出させる。
魅力の第二は、アドリブと作り込んだ台本の絶妙なバランスだ。例えば、映画化もされた名物企画「キス我慢選手権」では、あの手この手で誘惑してくるセクシー女優に対し、芸人たちが如何にキスを我慢できるかを競い合う。展開を知らされていない芸人たちは女優の会話に乗り、ときにドラマティックな物語を作り上げ、ときに(いや、ほとんど…)暴走を始める。この企画における劇団ひとりの演技力たるや称賛もので、俳優として重宝されるのも納得。現在のバラエティ番組において、ここまで芸人のポテンシャルが問われる企画も珍しいだろう(故に若手芸人が思わぬ爆発力&瞬発力を見せて、「ゴッドタン」をきっかけにブレイクしている。三四郎やおかずクラブはその好例)。
一方の名物企画「芸人マジ歌選手権」では、作り込まれた台本が笑いの波状攻撃を生む。今月は、芸人たちが渾身(こんしん)のオリジナルソングを披露するこの企画の’14年開催のライブ版を放送(中野サンプラザや東京国際フォーラムで行われるライブのチケットは即ソールドアウトだ)。その周到に練られた面白さ、くだらなさはもはや筆舌に尽くしがたいレベル(笑)。東京03の角田は得意のギターを片手に文字通り“マジ歌”を披露してオーディエンスの歓声を誘い、バナナマンの日村はオネエの人気キャラクター“ヒム子”に扮して「技あり~」のひと言で会場を笑いに包み込む。劇団ひとりに至っては、シュールなコスプレを身にまといながら愛と平和の一大ミュージカルを演じきり、観ている我々はただひたすら笑うのみなのだ。
そう、そこにあるのは混じりっけなしの笑いのみ。一切のエクスキューズ抜きに、出演者とスタッフが一丸となって笑いというゴールに突進する。無論、感動などという安易なゴールには着地せず、「テレビってこんなに自由で過激で面白いんだぜ!」とばかりに笑いを追い求める。平成ニッポンにおいては稀有(けう)にして、テレビのオモシロさを改めて教えてくれる「ゴッドタン」。そんな妥協なき姿勢に、むしろ私は感動を覚えてしまうのだ。
2016.5.25
ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第65弾!!
徳川埋蔵金発掘に人生を懸けた男のヒューマン・バトルムービー!
6月TV初放送「あたえられるか否か~徳川埋蔵金120年目の挑戦~【特別編集版】」
“徳川埋蔵金”と聞いて、往年のバラエティ番組「ギミア・ぶれいく」を思い出す方も多いだろう。バブル崩壊前夜の1989年から1992年にかけてTBS系で放送された高視聴率番組で、中でも「徳川埋蔵金発掘プロジェクト」は多くの視聴者を魅了した。糸井重里が中心となり、徳川幕府が赤城山中に隠したといわれる御用金を大捜索。レーダーなどの最新機器、ブルドーザーなどの大型重機、ときには超能力者までも担ぎ出して発掘が行われたが、ついに発見には至らなかった。その発掘プロジェクトのブレーンを務めていたのが、本作の主人公である水野智之氏だ。
そもそも、徳川埋蔵金とは何か? 1868年、徳川幕府を倒して明治新政府を立ち上げた維新軍は、徳川幕府が蓄えていた御用金360万両(現在の価値で数兆円とか)を 財政源にしようと企んでいた。しかし、御用金は江戸城からこつ然と消えた。「勘定奉行の小栗忠順が持ち逃げした」「船で何かを運び出すのを見た」というまことしやかな噂が流れ、御用金探しが始まったのである。
360万両というと、金の含有率50%とされる江戸後期の大判・小判でも総重量36トンにのぼる。幕末に大型トラックがあるはずもなく、これをひそかに持ち出すのはかなり難しい。つまり、今でいう“都市伝説”だ。UFOやネッシーと同じで、存在するかどうかわからないものに人生を懸けた男の物語である。そう書くと、智之氏は一獲千金を狙った夢追い人のように思えるが、実は違っていた…。
この映画は、ヒューマン・ドキュメンタリーである。明治16年、智之氏の祖父である智義氏が、かつての徳川幕府公儀勘定吟味役から徳川埋蔵金発掘を託されたのが始まり。そして、息子の義治氏が2代目、さらに義治氏の甥に当たる智之氏が徳川埋蔵金掘り3代目となって探し続けている。智之氏はまさに執念の男で、一族120年の思いがこもった言葉は名言だらけ。曰く、「たとえ百代かかっても、託されたから続ける。そうでなければただの宝探しだ」。
この映画は、謎解きミステリーでもある。埋蔵金を探す者たちはほかにも大勢いて、赤城山中にある岩を舐めるように観察しながら「ここに埋蔵金の在り処を示す文字が掘られている」などと推理する。智之氏は、そんな彼らを「逆立ちしたって出やしない」と一笑に付す。「探すうちに石の裏にある傷が文字や地図に見えてくる。それが最も怖い」。智之氏は謎解きに対する見解も見事で、「金が出たときが正解。実に簡単だ」。この名探偵の言葉は重みが違う。
そして、智之氏にとって、徳川埋蔵金は“夢”ではない。それを証明するのが、智之氏が小学生のときに聞いたという父親の言葉だ。「金が見つかったら、今ごろ出てきやがってと蹴倒してやる!」。もはや、倒すべき敵なのだ。この映画、実は水野一族vs.徳川埋蔵金のバトルムービーだった!
この映画が公開された’06年当時、智之氏は73歳だったが、これほど情熱にあふれた人物は見たことがない。しかも、出てくる言葉は人生哲学ばかり。人生に迷った方や目的を見失った方が本作を観れば、何かが見えてくるかもしれない。なにしろ、智之氏はこんなことを言う男なのだから。「(徳川埋蔵金は)水野以外出ません。断言する!」。こんな自信たっぷりのセリフを言ってみたいものである。こんな男の半生、観たいと思いませんか?
ちなみに、智之氏は’11年に永眠された。今は空の上から「埋蔵金はあそこじゃないか?」などと言っていることだろう。
2016.4.27
ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第64弾!!
“キワキワ”の恐怖が詰め込まれた禁断の心霊番組
懐かしのアイドルネタがちりばめられたNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が大ヒットし、海の向こうでは「ゴーストバスターズ」のリメイク、「インディ・ジョーンズ」シリーズの最新作の制作が発表されるなど、再び脚光を浴びている80年代。映画も元気いっぱいだったが、それ以上にムチャクチャやっていたのが日本のTV業界だ。やりすぎるとすぐに叩かれてしまう今の時代と違って、かなり“キワキワ”なことをやっていた。深夜枠なんて特に、エロの面でもかなり際どいことをやっていたっけ。
別の意味でギリギリなことをやっていたのが、心霊特集の番組だ。思えば、よくもまあこんな番組を平然と、ゴールデンタイムでやっていたものだと思う。今ならビートたけしが仕切って、肯定派と否定派に分かれたトークバラエティとして仕上げてしまうようなものを、どシリアスにドキュメンタリー的に探ってみせる。とても今では考えられない。
チェッカーズ、YMOのライヴ番組を放送し、ひそかに80年代をプッシュしてきた映画・チャンネルNECO。先月よりオンエアしている「これが世界の心霊だ」は、80年代に一世を風靡(ふうび)した心霊番組であり、“キワキワ”の最たるシロモノである。スタジオに霊能関係者を呼び、タレントゲストたちの前で検証するというもの。番組全体が大真面目に作られているものだから、「んなアホな」と思いつつも、ついつい見入ってしまう魅力にあふれている。
今月放送される第2回では、いきなり日本映画界の名優、故・伴淳三郎を降霊させるという驚がくの展開。しかも、故人と親しかった清川虹子と対面させるという無謀さ。さらに、宇宙と交信して金粉を降らせる(!?)という謎の“金粉おばさん”まで登場…! 6月放送の第3回では、フランスの幽霊屋敷に挑む姿も放送する。企画としてはわかるが、今のTVではマジでありえない場面が続出するのだ。
中でも人気だったのが、霊能者である故・宜保愛子が心霊スポットを訪れて心霊現象を検証するシリーズ。これはすさまじく怖かった。実際にTVカメラの前でおかしな現象が起こってしまうこともしばしばだが、たとえ何も起こらなくても、宜保愛子の言葉遣い、ただずまいが心霊現象にリアリティをプラスする。だから、本気で怖い。いわばドキュメンタリー調のホラー映画「パラノーマル・アクティビティ」をTVのバラエティでやっているようなものだから、怖いのも当然だ。オンエア日が宜保愛子の命日である5月6日の2日前というのもまた不吉な予感を匂わせる…。
今回の原稿を書くにあたり、番組を見直して一番怖かったのは、資料として受け取ったDVDの映像が途中から真っ暗になって観られなくなったこと…。しかも後からチャンネルの人に話を聞くと、DVDを何回ダビングしてもうまくできず、デッキが故障した上、映像をパソコンで確認しようとしたらマウスが壊れたとのこと。……信じるか信じないかは、あなた次第です!
2016.3.31
【第63回】
24時間、力様の出演作が金太郎飴状態で観られる至福
前略、竹内力様。映画デビュー30年、おめでとうございます。
思えば、力様が初めてやんちゃでユーモラスな一面をお見せになった作品が、映画初主演作「ころがし涼太 激突!モンスターバス」ではないでしょうか。ケンカは強いが美女には弱い、乗客無視で暴走しまくるバスの運転手に扮し、生身のアクションも披露されました。
その後、ミナミの鬼と恐れられつつも、常に弱い者を助ける金貸し・萬田銀次郎をクールに演じた大ヒット作「ミナミの帝王」シリーズ、10年以上続いた「仁義」シリーズのヤクザ役などで“Vシネの帝王”に。このころには、もはやトレンディ―な力様を思い出す人は少なくなりました。映画では、三池祟史監督、哀川翔共演のアクション「DEAD OR ALIVE 犯罪者」、深作欣二、健太監督の「バトル・ロワイアルⅡ 特別編 REVENGE」が忘れられません。最近は、「バトル・オブ・ヒロミくん! The High School SAMURAI BOY」の超老け顔の高校生役で、存分に笑わせていただきました。
さらに今回、なんと、力様の初冠バラエティ番組「竹内力、始めました」がスタートするとのこと。初回は力様が護摩修行に、それも約20年ぶりに電車に乗って行かれたそうですね!
「この番組は何をやってもいい。俺はいまだにトーク番組を断り続けていて、まだ私生活の部分は武器として持っている。でもここでは少し解禁というか、素の部分が出ますよ」と力様、衝撃の発言! しかも、今後番組では視聴者からのリクエストも募るとか!?
「こういうことをやってほしいとか送っていただければ。『つまらない』とかの感想でもいいですよ。文句言われてナンボの商売です。貴重なご意見をいただければと思います」と、侠(おとこ)・力様の熱いチャレンジ宣言! 必見でございます!
映画、Vシネ、バラエティと、24時間、いつ観ても力様の出演作が金太郎飴状態で観られる至福。もはや、24時間観続けるしかないと思う次第です。
2016.3.22
【第62回】
最新カルトムービーの誕生を見よ!
「どうして次々といろんなことが起きるんだ!」と言いたくなる出来事が相次いだ1月、SMAP騒動の渦中にキムタクが京都へ行っていたのは、主演映画「無限の住人」(’17年公開予定)の撮影をしていたため。この映画の監督が三池崇史。今年は火星を舞台にゴキ××と戦うSF大作「テラフォーマーズ」(’16年4月29日公開)、大ヒットした「土竜の唄 潜入捜査官 REIJI」の続編も年内に撮影開始というから、相変わらず休みなしのワーカホリック監督だ。
そんな三池監督のスケジュールが珍しくポッカリ空いた。トム・ハーディ主演のハリウッド映画が製作延期になったのだ。そのスキマを突いて生まれたのが「極道大戦争」。「噛まれたらヤクザになるヤクザ・ヴァンパイア映画ってどう?」という、監督を交えた飲み屋の雑談が即決で映画になったという。
三池監督は、高校生ヤクザや小学生ヒットマンが登場する「極道戦国志 不動」や、殺されたヤクザがサイボーグになって復活する「FULL METAL 極道」など、破天荒すぎるVシネマで注目を集めてきた。本作はまさに原点回帰であり、かつての三池崇史を呼び起こすという危なっかしい企画なのである。日活撮影所の取り壊しが決まった一角を使用して商店街のオープンセットを建設。最近は公道の撮影に制約がつきものだが、「撮影所の中なら何をやってもOK!」というわけで、映画・チャンネルNECOのコラムだから言うわけではないが、すごいぞ日活!
とはいえ、破天荒なウソにはリアルも必要だ。主人公の敏感肌ヤクザを演じる市原隼人の肉体を見よ! 鍛え抜かれた肉体と俊敏な動きは、こんなアクション俳優が日本にいたのかと驚いてしまう。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」にも出演した「ザ・レイド」のヤヤン・ルヒアンと、文字通り肉弾戦を繰り広げるのだ。さらなる最強の敵として登場するKAERUくんはカワイイぬいぐるみだが、中の人はブルース・リーを目標に肉体改造! とんでもない行動に出るので、しかと見届けていただきたい(ゆるキャラブームが終わったらこの映画のせいだ!)。
ほかにも、リリー・フランキーが組長役、脚本では男役だったのになぜか高島礼子が元“極妻”のカンロクで若頭役を怪演するという、悪ノリ気味の配役もたまらないが、商店街のカタギたちがどんどんヤクザ・ヴァンパイア化する狂騒ぶりは、もう最新カルトムービーの誕生と讃えるしかない。三池監督、またこんな映画待ってます!
2016.1.26
【第61回】
ジャッキー主演作の吹替え版を7ヵ月連続、計22作品放送!
「スター・ウォーズ」「007」、さらには「ロッキー」の新作まで顔を揃えた今年のお正月映画。“懐かし地獄”にハマった30代以上のオトナも多かったはず。後期高齢者を目前に控えたハリソン・フォードやシルヴェスター・スタローンが、あのころの魅力を失わずに登場するせいで、映画館で嗚咽しているおじさんの目撃率が上昇しているそう…どうか温かい目で見守ってください(笑)。
さて、彼らが復活を遂げている今、同時代にタメを張ったジャッキー・チェンが黙っているわけがない。2月12日(金)全国公開の最新作「ドラゴン・ブレイド」は、シルクロードを舞台にローマ帝国軍と中国軍の対決を描いたスペクタクル歴史大作。ジャッキーがジョン・キューザックやエイドリアン・ブロディら、ハリウッドスターを向こうに回して主演を飾った話題作だ。そして、映画・チャンネルNECOでは、公開に合わせて7ヵ月連続、計22作品(!)のジャッキー主演作の吹替え版を放送する。
注目は、“ジャッキー版インディ・ジョーンズ”とも言うべき監督・主演作「ライジング・ドラゴン」(’12年)。略奪された清朝時代の財宝をめぐって世界を飛び回るトレジャーハンターを演じた作品で、昔からのファンなら「サンダーアーム/龍兄虎弟」(’86年)、「プロジェクト・イーグル」(’91年)の流れを汲む作品だとわかるはず。それにしても、ローラーブレードスーツを装着したジャッキーが、山道を寝転がって猛スピードで疾走しながら、走行中の車の下に潜り込むスリリングなシーンでは、58歳にして命懸けのアクションをやってのける姿に圧倒されるばかり。一方で、地味な室内アクションにおいては、ソファや机を使って動きのアクセントをつける面白さも忘れない。これまで通り自らの肉体と頭を駆使して、奇想天外なアクションとアイデアを詰め込んだ“ジャッキー映画の真骨頂”とも言うべき快作だ。
ところで、日本でジャッキー映画が長きにわたって人気が衰えないのは、テレビ放送——それも石丸博也がジャッキー役を吹替えた、おなじみの声の影響が大きい。ジャッキーにはアクションだけではなく、“愛嬌”という強力な武器がある。そんな武器が吹替えによって倍増され、ちょっとしたつぶやきや、危機を乗り越えた後に口にするひと言が観る者をなごませてくれるのだ。今月から放送される22作品は、すべて石丸博也による吹替え版。懐かしむも良し、初めて観るキッカケにするも良し、目を凝らして、耳をすましてジャッキー映画の魅力を存分に味わってもらいたい。
2015.12.28
【第60回】
“今の映画”になった「さよなら歌舞伎町」と、極私的な歌舞伎町の思い出
映画ファンの多くはすでに御承知でしょうが、映画・チャンネルNECOは日活が運営しているCSチャンネルです。他局と比べて、往年の日活映画の放送に強いのはそのため。さまざまな映画やドラマがラインアップに並んでも、自ずと独自のカラーが出るのは面白いところです。だから、’15年公開の「さよなら歌舞伎町」のように、かつての日活ロマンポルノの匂いが漂う映画がNECOでTV初放送されることは、とてもおあつらえむきな気がします。
脚本は荒井晴彦(中野太と共同)。監督は廣木隆一。両者は初めて組んだ「ヴァイブレータ」(’03)でもうすでに————荒井さんが日活ロマンポルノ時代の「赫い髪の女」(’79)を女性目線から描き直したようなホンを書いたぞ、しかもミリオンフィルム(ピンク映画製作会社の一つ)からデビューした廣木監督で!————僕らの胸をかなり騒がせました。ソフトコアの性愛劇の枠を逆手に取って、生きる強さ、みずみずしさを描いた伝統を再生させ、官能描写をことごとく抑える風潮の現代日本映画にぶつける。そういう意欲、矜持をしたたかに感じました。
そこからまた時代は一転。セックスって、どこかムリしないとがんばれないものになってきて。
荒井×廣木のベテランコンビは、「さよなら歌舞伎町」でその空気の変化を、ラブホテルの従業員と客の人間模様を通して見事にすくい取っています。染谷将太演じる主人公が、セックスレスで付き合っているミュージジャンの彼女(前田敦子)が「311」号室で枕営業をしたかしないかでヤキモキする姿は、すっごく面白くて、しかし笑えない。フツーに肌と肌を合わせるシアワセを迂回しなくては見つけられなくなった、僕らみんなの風刺図だからです。
だけどそこから気付くのは、日活ロマンポルノが実は、純情とユーモア(下半身に関わることゆえ、より切実に、普遍的になる)を大きな魅力にしていたこと。当時担い手だった脚本家と監督が、今、改めてそれを伝えてくれている。だから本作は、オマージュの要素を多分に持ちつつ、当代の人気者のキャスティングが活き活きとハマった“今の映画”になっているのです。
にしても、歌舞伎町から新大久保にかけての新宿の空気。始発が走り出した時間あたりの花園神社とか、ヴィヴィッド過ぎて泣けてきます。いい映画ですよ。……ただ僕自身は、歌舞伎町をよく知らない。来るな、と言われたからです。
製作終了間際だった日活ロマンポルノを初めて専門館に入って観たのは、新聞奨学生を辞めてアルバイトを探していた’88年の春、19歳のとき。併映の旧作「キャバレー日記」(’82)に衝撃を受けた翌日の昼、舞台となった歌舞伎町に行き、当時の有名キャバレーに履歴書も持たずに飛び込みました。物書きになるには、まず歓楽街のバーテンになって人生勉強しなくてはいけない!……とまあ、思い返すと惚れ惚れするくらいアホというか、単純な思い込みで。
ところが、事務所から眠そうに出てきた小柄で無精ひげのおじさんに、「人手は足りないけどダメだよ」と断られたのです。「学生のうちから来るところじゃない。働き出すと、絶対に学校に行かなくなる」とも。ぶっきらぼうだけど、優しい人だとすぐに感じ取れた。付け入ろうと「しかしですね……」とグズグズ粘ったら、おじさんは、
「歌舞伎町には、もう、どうにもならなくなったらおいで。それまではがんばれ」
ピシャッとはねつけて、掃除機を持って店の中に消えていきました。それ以来、歌舞伎町周辺にはあまり立ち入っていません。おじさんはもちろん、働き場所としての意味で言ったわけですが、がんばりきらないうちは気安く足を向けてはいけないエリアだと、言葉が僕の中で違う意味に育った。数分だけの出会いでしたが、おじさんの親身には今でも感謝しています。
「キャバレー日記」の脚本も荒井晴彦。「さよなら歌舞伎町」は、そこまで踏まえて見ると、さらにジーンとくるものがあります。