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2023年10月25日(水)

三ヶ月連続企画“もう一度見たい”日本映画【11月】『クイール』/『あなたへ』

9月、10月、11月の三ヶ月連続で、「もう一度見たい日本映画」と題して、映画・チャンネルNECOで放送する番組の中から様々な日本映画を「何故、今見てほしいのか」という視点からご紹介していきます。今回取り上げる映画は、2004年公開『クイール』と2012年公開『あなたへ』

クイール

宣伝マンが見た『クイール』
クイールの一生から見る 普通なようで普通じゃない日常の存在

編成マンが選ぶオススメポイントBest3

番組情報(作品概要、放送日時)


あなたへ

宣伝マンが見た『あなたへ』
「自分を持って生きる」ということ

編成マンが選ぶオススメポイントBest3

番組情報(作品概要、放送日時)

 



2004年公開『クイール』。ベストセラー写真集『盲導犬クイールの一生』を『月はどっちに出ている』『血と骨』の崔洋一が監督し映画化した本作。改めて、今もう一度見てほしい理由とは。


 盲導犬の歴史は古代ローマ時代にまで遡るという。当時の絵画に犬が盲目の人の歩行補助をしている様子が描かれている。にもかかわらず、私はこれまで盲導犬に関して詳しく知る機会がなかった。そういった意味で、本作はまず盲導犬に関する知識の習得という面において非常に重要だ。しかし、私はそれ以上に大切なことに気づかされた。原作が『盲導犬クイールの“一生”』と言うことから、本作ではクイールが“生まれてからこの世を去るまで”が描かれる。そんな“生まれては死んでゆく”という動物にとって当たり前の事実を淡々と描いた本作は、自分の日常を見直すきっかけになった。



 クイールは普通のラブラドール・レトリーバーだ。ブリーダーの希望で盲導犬としての指導を受けるが、持ち前のマイペースな性格により訓練は難航する。それでも、訓練士の多和田はクイールを見捨てなかった。そんな中、クイールは視覚障がい者で生粋の頑固者である渡辺という男に出会う。そして、二人はパートナーとなり四苦八苦しながらも絆を深め合い互いに成長していく。


 本作はストーリーにおいて何ら特別なものはない。一匹の犬が生まれ、この世を去るまでを淡々と描いているだけだ。途中、様々な人々との出会いと別れも描かれるが、それも生きていれば多かれ少なかれ経験することであり、必ずしも特別な事ではない。しかし、それこそ本作の受け取るべきメッセージなのではないかと思う。つまり、「普通の日常を見つめ直す」ということだ。クイールの送った普通の日常を思い返す。そして、例えば「もしもクイールのパートナーが渡辺ではなかったら」と考える。すると、普通に感じられていたクイールの人生が、かけがえのない特別なものにも感じられてくる。「出会った」という単なる事実も「誰と誰が出会った」となると途端に劇的なものに変わる。私たちは自分の日常を普通だと思いがちであるが、自分が誰かと何かをした結果の今という日常は、普通なんかではないのだ。そのようなごくごく当たり前の、当たり前であるがゆえに忘れがちなことに本作は気づかせてくれる。「ありふれた日常の素晴らしさ」など語り尽くされたものなのに、それを自分ごととして落とし込めている人がどれだけいるのか。クイールの一生を追体験することで、自分の人生をきちんと見つめ直すきっかけになるはずだ。


盲導犬「クイール」がその名を冠する前、生まれた瞬間から眠りにつくまで、まさに「一生」を追った映画です。人物の寄りショットも少ない印象で、まさに主役は「クイール」。子犬のころなんて特に、かわいい…と思わず漏らしてしまうような、愛らしさ満載の癒し映画になっています!


どうしてもペットや動物ものは、感情移入しやすい点も相まって「感動!」という代名詞がつきがちです。本作ももちろんうるっとくるシーンもあるのですが、全体のバランスがちょうどいいんです。作中で「クイールはふつうだよ」と声をかけられるシーンがあるように、特別なのではなく、普通の盲導犬の一生に流れる時間を丁寧に、ゆっくり描いているからなのかな、と思います。


これは誰しもが二度見してしまうポイントかと思いますが、崔監督がこんなにもあたたかい物語を…!?と驚きました。まわりを固めるのは小林薫さん、椎名桔平さん、香川照之さん等、強めの俳優さんたちを、この優しい物語になじませているのは、崔監督のなせる業なのかもしれません。



クイール』(2004)
監督 崔洋一
脚本 丸山昇一、中村義洋
原作 秋元良平(写真)、石黒謙吾(文)『盲導犬クイールの一生』
出演 小林薫 椎名桔平 香川照之 戸田恵子 寺島しのぶ 黒谷友香 名取裕子、他
放送日時 11月1日(水) 21時00分~22時50分
11月11日(土)14時00分~16時00分




2012年公開『あなたへ』。高倉健の6年ぶりの銀幕復帰作であり、彼の遺作ともなった本作。改めて、今もう一度見てほしい理由とは。
※本文中に本編の展開や結末に触れている箇所がございます。


 「高倉健」と聞くと、日本を代表する映画スターであることと共に、「ストイック」というイメージが連想される。カメラの前に留まらず、プライベートも役者仕事のために過ごしていた。時には役作りのために2日もの間一切食事をとらないこともあったという。また、任侠作品に参加していた時期は、自らの日常生活から幸福感を排除するよう意識的に努めていたそうだ。そんな彼の遺作となった『あなたへ』という作品は、まさに「孤高」と言うに相応しい彼の生き様を描いたものだった。作中の彼の姿から、「自分を持って生きる」ということの本当の意味を教えられた。


 富山にある刑務所の指導技官・倉島英二は、亡き妻・洋子が自分宛の絵手紙を二枚残していたことを知らされる。その内、一枚は倉島のもとに、もう一枚は本人の希望で郵便局でしか受け取れない“局留め郵便”として 洋子の故郷・長崎県平戸市の郵便局に渡った。倉島の持つ絵手紙には、「故郷の海を訪れ、散骨して欲しい」との思いが記されていた。倉島はその願いを叶えるためにワンボックスカーで洋子の故郷を目指ことになる。その道中、倉島は様々な人物と出会う。彼らは皆それぞれ結婚生活に対する悩みを抱え、迷い、苦しんでいた。そんな彼らと接していく中で、倉島は洋子の思いに気づいていく。



 倉島が指導技官を務める刑務所に洋子は歌手として度々慰問に訪れていた。倉島はその歌声を聴く中で、次第に洋子に惹かれていった。しかし、洋子にはある秘密があった。洋子が刑務所を訪れていたのは慰問のためではなく、刑務所で過ごすある男に歌を届けるためだったのだ。洋子は弁護士を通してその男に絵手紙を送っていた。そこにはその男を想う洋子の言葉が綴られていた。しかし、その男が亡くなって以来、洋子は刑務所を訪れなくなっていた。



 洋子に先立たれた倉島は孤独を感じていた。そして、毎日毎日、洋子と過ごした幸せな日々を思い返しては郷愁にふけっていた。しかし、それは洋子が生きていた過去から前に進めていないということだった。生前、洋子は倉島に「季節外れの風鈴ほど悲しい音はない」と言っていた。つまり、それは亡くなった人も同様で、「どんなに素晴らしい思い出もそればかりにとりつかれていては悲しい思い出になってしまう」ということだろう。洋子はそれを倉島に伝えると同時に、刑務所で亡くなったあの男を忘れられずにいる自分に対して言い聞かせていたようにも思われる。
 作中で旅と放浪の違いは“目的と帰る所があるかないか”という話が出てくる。倉島は無意識のうちに、自分自身の生きる目的も帰る所も洋子であると思っていたのではないか。それ故に、洋子が亡くなってからは放浪のようにあてもなくさまよう日々を過ごしていたのではないか。洋子は自分自身がそうであったことから、倉島に同じ道を歩んでほしくないと願ったのだろう。そこで、洋子は倉島に「散骨」という目的を与えた。散骨をするということは、墓に入らないということであり、もう会いに行くこともできないということだ。つまり、洋子は、倉島が「目的」を達成すると同時に自分という「帰る所」を失えるようにと考えていたのではないか。洋子は倉島を自分という呪縛から解いてあげることで「あなたにはあなたの時間が流れている」というメッセージを伝えたかったのだ。
 生きる目的と帰る所を自分の外に設けてしまうと、それを失った時、人生に迷ってしまう。では、どうするべきか。生きる目的も帰る所も最終的には自分の中に置くべきなのだろう。自分の夢や理想のために生きる。自分自身と対話することで心の拠り所すら自分自身に据え置く。この生き方は、まさに「孤高」に生きた「高倉健」そのものであるように感じる。役者として、一人の人間として、孤高にストイックに人生を生き抜いた高倉健が演じたからこそ、最後に漁港を歩く倉島の姿には圧倒的な説得力を感じる。
 ただし、風鈴もずっと仕舞ったままでは意味がない。夏にはその音を聞きたくなる。人生もずっと一人では意味がない。孤独を感じた時には誰かに頼りたくなる。確固たる自分を持ちながらも同時に誰かを愛し誰かに愛される必要がある。そんなある意味矛盾した複雑さこそが人生なのだと倉島の旅から教えられた。


市古聖智の原案を降旗康男監督と脚本家・青島武が再構築し練り上げた オリジナルストーリーというだけあり、より高倉健さんに近い人物像に なっていったのかもしれません


愛する妻である洋子を演じるのは、田中裕子さん。やはり印象的なのは何度か登場する「星めぐりの歌」歌唱シーンです。ふたりの「はじまり」であり、物語をやさしく包み込みます。表情や言葉の端々から、深い愛が伝わってくるような演技は必見です。


亡き妻の故郷へ向けて旅を始める倉島(高倉健)は、その先々でさまざまな人々と出会います。そのキャストの豪華たるや。キャンピングカーで旅をしている元中学教師(ビートたけし)、各地でイカ飯の実演販売をしている田宮(草彅剛)、南原(佐藤浩市)、漁港の食堂の娘(綾瀬はるか)など、豪華俳優陣と高倉健さんの共演は見どころです。



あなたへ』(2012)
監督 降旗康男
脚本 青島武
出演 高倉健 田中裕子 佐藤浩市 草彅剛 余貴美子 綾瀬はるか 三浦貴大 大滝秀治 長塚京三 原田美枝子 浅野忠信 ビートたけし、他
放送日時 11月10日(金)22時00分~24時00分
※同日20時00分~22時00分、高倉健主演『単騎、千里を走る。』の放送もございます。
11月25日(土)21時00分~23時00分





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